10センチ前後もある、あんなに大きな赤ちゃんの頭が、お母さんの産道を通り抜けて、一体どうやって出てくるんだろうと不思議に思う妊婦さんは多いことでしょう。

実際、出産の際に膣の入り口部分が肛門に向かって裂けてしまい、治りが遅くなったり、思わぬ出血を伴うケースが少なくありません。そこで事前に出口を大きくしておくのが「会陰切開」です。医師と助産師は、予め「会陰切開」を希望するかを妊婦に尋ねておきますが、当日出産の現場で、裂傷を防ぐ会陰切開が必要かどうかを見極めます。医師と相談して切開を希望するかを決めておきましょう。

会陰とは、膣と肛門の間とその周辺部分です。会陰切開は、会陰が広ければ広いほど赤ちゃんは出やすいことから、1742年にアイルランドの医師が始めた施術で、難産を回避できる可能性があります。分娩が長引いたり妊婦の体力が落ち難産になると、胎児の頭をカップのような吸引器で吸着左折「吸引分娩」や、「鉗子分娩(かしぶんべん)」といって、トングのような挟むアイテムで胎児の頭を挟み、引っ張り出したり、緊急帝王切開(カイザー)になることもあります。

会陰切開はどこを切る❔

会陰切開は、陣痛が来て5センチを超え、膣口が全開大して頭が見えてくるタイミングに行い、局所麻酔の注射をして切開をします。麻酔も痛いのですが、陣痛や分娩自体の方が痛いと感じる妊婦さんもいます。切開する場所は、縦に入れると肛門の方向が避けるので、肛門を避けて左右、7時または5時の方向に鋏を入れて切ります。

会陰切開をしないとどうなる❔

赤ちゃんが出ようとする際、ゆっくりと会陰は伸び、切開をせずに産めるように妊婦さんの身体は作られてはいるので、切開なしの自然分娩で安産の方も多いですが、妊婦さんの努力で会陰マッサージなどで会陰を柔らかくしていたり、経産婦で会陰が広がり易くなっている場合もあります。会陰切開をしない場合には急に会陰が裂け「会陰裂傷」をすることがありますが、傷の治りが遅くなることがあります。裂傷には1〜4段階があり、重症度が異なります。

  ・第1度会陰裂傷;会陰部の皮膚のみ、膣壁粘膜表面のみ裂傷
  ・第2度会陰裂傷;皮膚とともにその下の筋肉層まで損傷が及ぶ裂傷
  ・第3度会陰裂傷;肛門を絞める筋肉の肛門括約筋が断裂した裂傷
  ・第4度会陰裂傷;会陰から肛門や直腸粘膜までが損傷した裂傷

会陰切開後の治る時間と生活は❔

赤ちゃんが生まれ、胎盤も出したら、会陰切開の傷部分を縫合します。抜糸の不要な溶ける糸を使うことが多いです。切開後の痛みは強いので、1週間ほど様子を見て、3週間ほどで治り、ドーナツクッションなどを使って座ると痛みも緩和されます。排便も気になるところですが、傷がひどくなることはほとんどありません。常に清潔に保ち、ばい菌が入らないようにしましょう。

会陰切開後のセックス再開は、悪露と体調を考慮して初めても構いませんが、少なくとも1ケ月は開けてください。ただ、数年傷の痛みが残る人もいますので、検診で身体を確認しながら、無理をしないようにしましょう。

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