妊婦、高齢者、免疫不全者、乳幼児は、食中毒の感受性が強いので、事前に知識を持ち、気を付けて生活しましょう。

リステリア菌  潜伏 9-48時間

2020年、米カリフォルニア州やハワイ州で、リステリア菌に感染したエノキダケを生で食べたことが原因で36人に症状が出て、4人が死亡、30人が入院し、妊婦が6例、うち2人は流産したという悲しいニュースがありました。リステリア症の症状は、頭痛、首の凝り、意識の混乱、平衡感覚の喪失、発熱、筋肉痛、けいれんなどので、重症化すると死に至ります。特に妊婦は流産や死産、早産の可能性があるので、食品は気を付けなければなりません。

リステリア菌で食中毒が多いのが、ナチュラルチーズ、生乳、生ハム、肉や魚のパテ、ネギトロ、スモークサーモンなどの燻製魚介類、魚卵製品(明太子、筋子、たらこ)、サラダ、生野菜等などです。

黄色ブドウ球菌 潜伏 1-6時間

黄色ブドウ球菌は、食中毒のだけでなく、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌です。
健康な人でも20〜30%が保菌し、指・鼻・のど・耳・皮ふなどに高率で検出され、動物の皮膚、腸管、ホコリの中などにも存在します。
食べ物の中で増殖するときに「エンテロトキシン」という毒素をつくり、これを食品と一緒に食べることにより、食中毒となります。

症状は激しい嘔気・嘔吐、疝痛性腹痛、下痢、急性胃腸炎で、発熱やショック症状を伴うこともあります。
菌自体は熱に弱いですが、毒素は100℃ 20分の加熱でも分解されず、酸素のない状態でも増殖可能で、多少塩分があっても毒素をつくります。

おにぎり、寿司、肉、卵、乳、サンドウィッチなどの調理加工品が多いので、おにぎりやサンドイッチを作る際は、できるだけラップを使用して作りましょう。

ウェルシュ菌 潜伏 8-16時間

糞便や土壌中によくいる菌で、 加熱で消えない菌です。再加熱により酸素が放出され、肉類に含まれる還元物質によりウェルシュ菌が増殖します。症状は2日程度の腹痛と下痢ですが、妊婦さんにとっての腹痛は辛いものになるでしょう。よくある食品では、カレ-, シチュ-や鶏肉、牛肉、鶏肉、魚介類などの調理食品(ロ-ストビ-フ、若鶏のトマト煮込み、ロ-ルキャベツ、肉じゃがなど)豆腐料理(麻婆簿豆腐など)、野菜料理(カボチャの煮付け、野菜のクリ-ム煮など)なので、夏場の調理は、調理後数時間以内に食べるのが予防となります。

テイクアウトやお弁当の購入も増えていると思うので、購入の際はよく見て買い、妊婦はできるだけ自分で作ったものを食べるようにしましょう。

セレウス菌 潜伏 6時間

セレウス菌は土壌細菌で、お米、麦などの農産物にあります。健康な成人の10%で常在菌として腸管の中に見られ、100度で加熱しても死滅しない菌です。症状は下痢と腹痛、嘔吐で、多くが下痢です。

よくある食品は、焼飯、ピラフが多く、オムライス、パエリア、ドライカレ-など米飯の調理食品で見られ、スパゲッティなど小麦を使った麺類でも症状が出ることがあります。米飯やゆでたスパゲティ-を6時間程度室温に放置すると、セレウス菌が増殖してセレウリドが産生されることから、作ったらすぐに食べるか冷蔵庫で保存を心がけましょう。

ボツリヌス菌  潜伏 12-72時間

稀にしか起こらないが大変死亡率の高いのが、ボツリヌス中毒症です。ボツリヌス菌では蜂蜜が有名ですが、大人である妊婦さんは大腸菌があるので、基本的に蜂蜜は食べても大丈夫です。ただし、蜂蜜を常用していて赤ちゃんがいる家庭は、子供がいたずらや味見で手を伸ばすということも考えられます。

ボツリヌス菌の事故で多いのが「乳児ボツリヌス症」です。
1歳未満の乳児の腸内には、成人のような大腸菌がまだないので、生きたボツリヌス菌が腸内に入ると、腸内でボツリヌス菌が増え、毒素で「ボツリヌス中毒」を起こしてしまいます。稀にそのことを知らないお母さんが、離乳食にハチミツを混ぜたり、甘い蜂蜜を舐めさせたりした場合に、ショック症状が出て、悪い場合、死んでしまいます。母子手帳にも与えないように書いてあるのでしっかり読んでおきましょう。

ボツリヌス菌は蜂蜜以外でもみられ、いずしや真空パック製品、ソーセージ、ハムが有名です。菌は80℃で30分、100℃で10分の加熱により毒性を失うので、食べる直前に十分加熱しておけば、菌が生き残っていても毒素は消えます。海外に行った際は、特にソーセージやハムの焼き具合に気を付けましょう。

サルモネラ菌 潜伏 潜伏 1-3日

2020年、無償提供された弁当が原因で、医療関係者に集団食中毒が発生しました。原因はサルモネラ菌。7~9月の夏季は特にサルモネラ菌の発生が高く、手指消毒などを徹底する必要があります。

カメ・イグアナ、ネズミ・ハエ・ゴキブリ、犬、猫、などの「ペット」からの感染や魚介類の生食、鶏肉、生卵、家禽などから検出されることが多く、卵の殻は有名ですが、国内の卵は出荷前に消毒をしていることが多いので原因にはなりにくい部分もあります。しかし、食肉製品、乳製品、洋菓子、オムレツ、自家製マヨネーズ、だし巻き卵、とろろ、半熟の卵焼きなどで検出されることもあるので、夏場の卵はよく加熱したり、卵かけご飯はなるべく控えた方が良いかもしれません。

サルモネラ菌の症状は悪心、嘔吐、腹痛、下痢、39℃以上の発熱が特徴で脱水症状を示す場合もあり、重くなるとけいれんや意識障害をおこすことがあります。特に新生児は感染性が高く、菌が血液内に残ったままとなる菌血症をおこすこともあります。

市販されているほとんどの消毒剤がサルモネラ菌に有効ですので、料理の前は、きちんと手洗い、手指消毒をしましょう。成人の場合はサルモネラ菌を胃酸で死滅させることができることが多いのですが、胃酸の少ない子どもや高齢者は少ない菌数でも感染しやすので注意が必要です。

ノロウイルス 潜伏 24-48時間

ノロウイルスは一年を通して発生しますが、特に12月頃の冬季に流行します。牡蠣や赤貝などの2枚貝や不十分な加熱の食品が原因であることが多いですが、ヒトからヒトへの感染や汚染された調理器具や手指、感染者の吐物、糞便が原因で感染することも知られています。妊婦は生で貝を食べないようにしてください。

ノロウイルスはヒトの腸管で増殖し、腹痛・下痢・嘔吐 が起こります。発熱は37〜38℃の軽度で、大人では強い吐き気や腹部膨満感があり、通常であれば1〜2日程度で症状は治まります。下痢は水様性で、重症では1日に十数回も見られますが、2〜3回で治ままることもあります。

感染者が嘔吐した後や、便座などは、使い捨ての手袋、ガウン、マスク、くつカバーなどを使用し、塩素系漂白剤を水で薄めて、0.1%の塩素系漂白剤調製液を作成し清掃します。ウイルスは高く舞い上がるため、広範囲の壁や床も洗浄した方が良いでしょう。

腸炎ビブリオ 潜伏 2-48時間

生鮮魚介類やその加工品などから感染することが多く、熱と水には弱い菌なので、75℃で1分以上加熱すれば死滅します。ただ、塩分を好むので、浅漬けや塩で締めた段階で増殖したりします。調理の過程で手やまな板、包丁を介して二次汚染された食品に気をつけましょう。

症状は堪え難い腹痛、水様性や粘液性の下痢、血便、発熱(37〜38℃)、嘔吐、吐き気で、数日で治ります。高齢者では低血圧、心電図異常などがみられることもあり、死に至ることもあるのであなどれません。

多くの食中毒に感受性の強い妊婦さんは、日頃から生物を避けるなどの配慮が必要です。念には念を。後悔しないように過ごしましょう。

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