近年、関東を中心に「風しん」が流行しています。出産で多い年齢層の30代の男女に、風しんの抗体を持っていない人も多く、現在は殆どの市町村で、無料で抗体検査を受けることができます。風しんは急性の風しんウイルスによっておこる発疹性感染症で、飛沫感染により感染の前後約1週間は家族やパートナーに感染させる厄介な病気で、インフルエンザよりも簡単に感染します。

子どもの頃に風しんにかかったことがあるから大丈夫など言われている方も、実は違う発疹だったというケースや、既に抗体値が落ちている可能性もあるので、大人になった今、改めて検査をした方が良いでしょう。

特に妊婦は予防接種が重要で、妊娠20週頃までに妊婦が風疹ウイルスに罹患すると胎盤を介して胎児にも感染し、幼児が「先天性風疹症候群(CRS)」になる可能性があります。妊娠初期の妊娠1カ月までに母親が風しんにかかった場合は、先天性風疹症候群になる可能性は50%、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度で、生まれるまでの母体の検査では偽陰性などもあるので、感染していないとされていても、生後に感染が判明する場合もあります。

赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になると、難聴、心臓の病気、白内障・緑内障・網膜症などの目の病気、低出生体重、精神・運動発達の遅れ、発育の遅れ、血小板減少性紫斑(しはん)病、肝脾腫(かんぴしゅ)(肝臓や脾臓が腫れること)などが現れ、特に多いとされるのが難聴です。片耳が聞こえなかったり、大きな音以外は聞こえづらいといった症状が生後顕著に現れてきます。

大人の場合、風しんの症状は、38℃前後の発熱、耳や首の後ろのリンパ節の腫れ、目の充血、せき、全身の赤い発しん、関節痛が現れることも多く、脳炎や血小板減少性紫斑病などへ進行し、重症化して入院することもありますし、罹患がわからない程度の軽症の人も20%程います。症状が出ない人は風しんとわからないまま胎児に感染することもあるので、自分の抗体は把握しておいたほうが良いでしょう。

風しんの予防接種(麻疹風疹混合ワクチン)について

妊婦は、家族(夫、子ども、同居家族等)の抗体有無も聞いておき、抗体がなさそうであれば予防接種を受けてもらいましょう。

妊婦になれば風しんの予防接種を受けることはできませんので、妊娠を希望している人は受けておくこと、妊婦になってから抗体がないと知った時は、人混みや子どもの集まる場所へは行かないことが鉄則です。もし妊娠が終了した場合も、再度妊娠する際や、子育てに向けて、すぐに予防接種を受けておきましょう。

風しんの予防接種(麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン):ニワトリの胚細胞を用いて製造)は、2回の接種を受けることで、抗体が十分と言える可能性が高く、0〜1回接種の30代以降の方は検査をした方が良いでしょう。1回幼少の頃受けて抗体が低くなっていると分かった場合は、追加接種で免疫をつけることができます。

抗体検査の結果目安は以下の通りです。

風しん抗体価(HI法)・(EIA法

・8倍未満、陰性 又は 判定保留:免疫を保有していないため、風しん含有ワクチンの接種を推奨。

・16倍、陽性(EIA価8.0未満):感染により胎児へ影響が生じる可能性があるので、風しん含有ワクチンの 接種を推奨。

・32倍以上、陽性(EIA価8.0以上):風しんの感染予防に十分な免疫を保有しているので、追加接種は不要。

自分は抗体があるだろうから大丈夫、まだ妊娠は先なので大丈夫などと自己判断はせず、念の為でも調べておきましょう。


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