妊娠すると、6、7週目あたりからつわりが始まり、早速歯磨きが辛くなりますよね。歯ブラシをくわえるだけでもウエッとなったり、うがいでもウエっ。ましてや、歯磨き粉(研磨剤)を使うとなると、少しの匂いも気になり、全く歯を磨くことができずに困っている妊婦さんも多くなります。妊娠期は唾液の量が減り、口内はまさに病原菌を増やす最適の環境です。

まずは、念入りにクチュクチュうがい、大まかな汚れを落としたら、歯磨き粉を使用しない「す磨き」、毛の多い少々高級な歯ブラシを使って、効率よく磨いていきましょう。特に、歯の奥や裏側、前歯の表面などが落とし穴ですので、細かく素早く、丁寧に磨いていきます。さらに、研磨剤を使わない場合、歯の隙間を掃除する「デンタルフロス」は必ずした方が良いです。サイズはSSからあるので、なるべく負担の少ない細いフロスから試してみると良いでしょう。すみがきだけでは不安な場合、少量の塩でも大丈夫です。塩は歯茎の引き締めには効果があります。

妊婦になると歯周病になりやすいのはなぜ❔

妊娠すると強くなるエストロゲン(女性ホルモン)が、歯周病原細菌を増やす原因です。妊婦は妊婦ではない人より抵抗も低く、歯周病になる確率が高く、特に早産や低体重児の原因になりやすいです。

「歯周病」とは、歯肉や歯根膜、歯槽骨などの歯周組織を破壊し、歯茎が下がって歯が大きく見えたり、歯茎が痩せ、歯磨きの有無にかかわらず、歯茎から血が出てくることで気づきます。歯周病が悪化すると、歯が抜け落ちますが、それ以前に、妊婦の場合、胎盤を通じて胎児に菌が感染することもあり、いつも以上に注意が必要です。

つわりがあるうちは器具を入れにくく歯科には行けないので、さらに歯周病の気づきが遅くなることがあります。妊娠を望む人は早めに歯科で万全の状態にしておくか、妊娠に気づいたら妊婦であることを歯科医に伝えた上で、つわりが始まる前5週目以前に歯の歯石取りなどの基本的クなリーニングをしておきましょう。

「妊娠性歯肉炎」は、アルコールの摂取よりも早産と低体重児のリスクが7倍以上と大幅に高く、多くの妊婦さんは、そこまで重要なことと考えていないことも多いです。むし歯の原因となる細菌(ミュータンス菌)を抑え、プラークを減らし、毎日の歯磨きでコントロールしていくことが重要です。

歯周病の原因、プラークとミュータンス菌とは❔

ミュータンス菌は、ストレプトコッカス・ミュータンスという細菌で、食事後、食べかすのなかの糖質(ショ糖)を分解し、ネバネバの薄い黄色い色などの歯垢(プラーク)を作ります。ミュータンス菌の増殖は大変早く、1日歯を磨かないだけでもとんでもない数に増殖し、酸を作ります。酸は歯を溶かし、「歯肉炎」、「歯周炎」、「歯周病」となっていき、歯石を取るなどの治療をしない限りは悪化を続けます。

まずは朝、起きたら食事の前に軽く歯を磨いたり、うがいをすることもプラスのポイントです。

妊婦が好む甘いジュースや甘い炭酸飲料は、歯垢を作りやすいので、飲んだら必ず歯を磨き、うがいを丁寧にしましょう。また、歯周病はストレスや疲労により免疫力が低下することで悪化もしますので、妊婦の皆さんはストレスを溜めない生活を送ることも大切です。 

歯周病でなぜ早産や低体重児のリスクが高まるのか❔

歯周病で歯肉の炎症がおきると、炎症を抑えようとして「プロスタグランジン」という血圧低下作用を持つ子宮収縮物質が抗炎症作用として体内で活発になります。プロスタグランジンは通常精液の中にも存在しますが、これと同じ作用が母体で働き、子宮は収縮され固くなり、子宮内膜が剥がれやすくなり、出産を促している作用と似たような状態になり、早産につながります。

つわりが落ち着き、6ヶ月頃には歯科受診も可能です。予約の際は妊娠中であることを伝え、予約を入れると良いでしょう。さらに、「母子手帳」を持参すると麻酔などに配慮してくれるので安心です。※2020年より、妊婦加算は廃止されているので妊婦であることによる追加料金はかかりません。

歯を綺麗にし、赤ちゃんを迎えてあげましょう。

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